7-2.会社運営 役員報酬
それでは実際の○を見ていきましょう。
who : 会社
what : 役員報酬(定期同額給与)
where : 定期同額給与は税務署への届出は不要
how : 同意書
why :
when : 会社の登記完了後
給料とは異なる役員報酬
給料とは異なり、役員報酬は委任契約となるため締め日という概念は馴染みません。そのため一般的には期間と支給時期という関係性となり、10月分を10月末日に支払うとなどといった形式になります。
合同会社の社員の給与は税法上役員報酬として取り扱われます。ただし、法人税法上損金算入できる(経費にできる)役員報酬は次の3つに限定されています。
定期同額給与
いわゆる一般的なもので税務署への届出は不要です。
事前確定届出給与
退職給与以外の臨時的な報酬で、役員賞与とも言われます。事前に税務署に届出をする必要があります。
この制度はともすると利益調整になりがちなので、支払いの際に1円、1日でもずれると経費になりません。
利益連動給与
同族会社は適用対象外となります。
役員報酬の決定
役員報酬の金額は定款で記載がなければ、原則、毎年の定時社員総会で決定します。役員報酬は、毎月同じ時期に、毎月同じ金額を支払うのが原則(定期同額給与)です。
そして、事前に税務署に届出をして、その届出の内容通りの金額を支給しなければなりません。
社長1人の合同会社でも役員報酬の決定と変更の際は同意書の作成はしておいたほうがいいです。税務調査があった際に適正に役員報酬を決定した旨を伝える際の資料として活用できます。
会社設立後3か月以内に役員報酬を決定し、毎月定額となり、変更は1年に1回です。事業年度2年目以降は事業年度開始から3か月以内に役員報酬の変更ができます。
社会保険料の関係でも、標準報酬月額表で、それまでの標準報酬月額の等級と2等級以上の差が生じたときには、随時改定の手続きが必要となります。役員報酬が変更した月の3カ月後の給与支給日の翌日から、速やかに行うこととされています。したがって、年金事務所に対する関係でも、やはり役員報酬を決定した日付を証する書面として議事録等が必要となるわけです。こうした議事録は、合同会社であれば、原則として社員の過半数で決定したことを証する書面等がこれに相当します(社員が2人以上の場合)。
同意書
合同会社では、株式会社のように株主総会(合同会社の社員総会に相当)、取締役会、代表取締役、監査役などといった機関の設置が義務づけられていませんので、その議事録の作成も法律上義務づけられていません。もし機関を設置するのであれば、定款で社員総会を設置して社員総会議事録で記録を残す方法があります。議事録の作成義務がないものの、税務調査など対外的に 意思決定を行った日付と内容を証明する場合に備えて、議事録に準じた書面として同意書というかたちで文書を作成しておく方が望ましです。たとえ社長1人の合同会社であってもです。
同意書の作成が必要な場合として以下の場合が考えれれます。
登記、定款を変更する場合
役員報酬を変更する場合
決算書を作成・確定する場合
同意書の例
令和〇〇年〇〇月〇〇日 当社本店において下記のことについて総社員の同意があった(1人会社の場合:下記の通り決定した)。
社員総数:1名 出席社員数:1名
記
1 業務執行社員〇〇〇〇の報酬を、令和〇〇年〇〇月〇〇日 より、次のとおりとする。
報酬金額 月額 〇〇万円
以上
上記について、総社員の同意があった(1人会社の場合:決定した)ことを証するためこの同意書を作成し、次のとおり記名押印する。
令和〇〇年〇〇月〇〇日
〇〇合同会社 社員 〇〇〇〇印
随時改定
標準報酬月額の随時改定とは、標準報酬の月額変更のことです。
標準報酬月額は、通常、年に1回7月に届出する算定基礎届に基づいて決定されます。これを「定時決定」といい、毎年4~6月の3ヶ月間の報酬総額から1ヶ月の平均額を求め、標準報酬月額が決定されます。決定された標準報酬月額は9月から適用されます。
具体的には、下記の条件がすべて当てはまれば随時改定の手続きが必要になります。
基本給などの固定的賃金が変更している
支払基礎日程が17日ある
変動した月から3ヶ月の平均に該当する標準報酬月額と変動前の標準報酬月額に2等級以上の差がある
協会けんぽの場合
健康保険の保険者(運営主体)には全国健康保険協会(協会けんぽ)と健康保険組合がありますが、協会けんぽのケースで随時改定を説明します。
月額変更届の正式名称は「健康保険・厚生年金保険被保険者報酬月額変更届」といい、日本年金機構の都道府県ごとの事務センターまたは管轄の年金事務所に提出する書類です。
新しい保険料率で給与計算するのは、報酬月額変更届を提出した後「固定的賃金の変動があった月から連続する3ヶ月の翌月」、つまり報酬の変動があったときから数えて4ヶ月目からです。社会保険料は翌月に納付することになりますので、標準報酬月額改定月の翌月(報酬の変動があった月から5ヶ月目)に支払われた給与から新たな保険料を納付することになります。
ただし、給与からの社会保険料控除を「当月」としている事業所では、報酬の変動があったときから数えて4ヶ月目に支払われる給与から、新たな保険料額となります。
社会保険料が変更になる場合は、標準報酬月額変更により社会保険料が変更になる旨の通知書などを給与明細書に入れておきましょう。
随時改定による変更で改定される標準報酬月額は、改定月が6月以前の場合はその年の8月まで、改定月が7月以降の場合は翌年の8月まで適用されます。
役員報酬額
協会けんぽの保険料表によると、○○県の40歳から64歳までの会社と折半した月額最低の健康保険料は○円、厚生年金は○円です。ということは、最低でも役員報酬が月額13,000円くらいないと給与からの天引きができなくなってしまいます。法人設立当初は業績の見通しが立てにくいことから役員報酬を低めに設定したくなりますが、金額によってメリット・デメリットがありそうです。
役員報酬月額0円
社会保険ではなく国民健康保険へ加入します。
役員報酬月額1万円
手取り額がマイナスになってしまいます。
役員報酬月額1.3万円
社会保険加入の最低ラインです。
役員報酬月額5万円
昨年の住民税の天引き額次第では手取り分を確保できます。
役員報酬月額8万円
給与所得控除65万円と基礎控除38万円を有効活用できます。
役員報酬月額9万円
年収が所得控除合計103万円を超えるので住民税や所得税が課税対象になります。
住民税
住民税の金額は、前年の1月1日~12月31日までの所得によって決まります。翌年1月1日の時点で住所がある自治体にその年の6月から納付します。
会社を退職して自分で法人を設立した場合の住民税の支払いは以下の通りです。
1月1日~5月31日に退職した場合
退職月の給与や退職金から5月分までの住民税を一括で徴収されます。退職月の給与と退職金の合計よりも徴収される住民税のほうが多い場合には、特別徴収から普通徴収に切り替わり自分で納付します。
6月1日~12月31日に退職した場合
6月1日~12月31日までに退職した場合、退職月の翌月以降に納める予定だった住民税の支払い方法は2つの選択肢があります。
普通徴収に切り替わり、自治体から普通徴収のための納税通知書が送付されます。
会社が退職月の給与や退職金から一括で徴収します。
役員報酬にかかる社会保険料と税金
役員報酬は、税法上は会社員等が受け取る給与所得と同じ扱いになりますので、健康保険料、厚生年金保険料、所得税、住民税が源泉徴収されます。
「源泉徴収」とは、会社が従業員に支払う給与から、あらかじめ所得税分を天引きすることをいいます。
天引きされるものには所得税のほかに、厚生年金や健康保険、雇用保険や介護保険など、保険関連のものもあります。また、住民税も給与から天引きされる税金のひとつです。
健康保険
厚生年金
雇用保険
介護保険
所得税
住民税
役員報酬(定期同額給与)
-健康保険料
-厚生年金保険料
-源泉徴収税(所得税)(年間103万円以下は非課税)
-特別徴収税(住民税)(年間100万円以下は非課税)
健康保険・厚生年金保険の保険料
健康保険と厚生年金保健の保険料(控除)は、毎年各都道府県ごとに保険料が設定されますので、自分で役員報酬にかかる保険料控除を計算する場合には毎年確認する必要があります。健康保険と厚生年金の保険料額表は合わせて全国健康保険協会のウェブサイトより閲覧できます。
保険料額表「介護保険第2号被保険者」とは、ひらたくいうと40歳以上64歳以下の方を指します。
健康保険料と厚生年金保険料は、会社と役員又は従業員とで折半して負担しますが、一人会社の場合には両方自分で支払う感覚になります。
国民健康保険と違い、扶養人数が変わっても社会保険料の額は変わりません。
源泉徴収税
役員報酬から健康保険料と厚生年金保険料が控除されます。そして所得税と復興特別所得税が併せて源泉徴収されます。
特別徴収税
最後に、役員報酬には住民税もかかります。住民税の支払い方法は、年4回に分けて自分で支払う「普通徴収」と、住民税の金額を12で割って役員報酬から天引きする「特別徴収」とがありますが、役員報酬の場合は特別徴収が義務付けられています。
住民税については会社ではなく市区町村が計算を行い、毎年5月に「特別徴収税額通知書」が送付されてきます。
これには6月から翌年5月までの特別徴収税額が記載されているので、6月以降からその金額を役員報酬から天引きしていく必要があります。
納付 社会保険料
健康保険・厚生年金保険の保険料の徴収は、日本年金機構(年金事務所)が行うこととされており、事業主は毎月の給料および賞与から被保険者負担分の保険料を差し引いて、事業主負担分の保険料とあわせて、納付期限までに納めることになっています。
毎月、事業主が納付する保険料額は、提出される被保険者の資格取得、喪失、標準報酬月額または賞与支払等の変動に関する届出内容を基に毎月10日ごろに前月分を確定し、20日ごろ、事業所へ「保険料納入告知書」を送付する方法でお知らせしています。保険料の納付期限は、納付対象月の翌月末日です。
口座振替
金融機関の窓口で納付
電子納付(Pay-easy)
健康保険・厚生年金保険 保険料関係届書・申請書一覧
創業当初等で役員報酬をゼロに設定する場合、そもそも報酬から厚生年金保険料や健康保険料を徴収できないため、社会保険は非加入の扱いとなります。
前提として社会保険は役員報酬が発生していないと加入する事ができません。最低でも約12,000円は役員報酬から徴収しなければならないので、それを上回る報酬額を設定する必要があります。
納付 徴収税
源泉徴収税(所得税)及び特別徴収税(住民税)の納付期限は、役員報酬を支払った月の翌月10日となります。
源泉徴収税については「所得税徴収高計算書」という納付のための書類を作成し納付します。
特別徴収税については市区町村より送付される納付書を用いて納付します。
納付手続きを年2回に減らしてくれる「納期の特例」という措置が用意されています。源泉所得税の納期の特例とは、毎月10日に行う源泉徴収税の納付手続きを、年2回(7月と1月)に減らしてくれる特定措置のことです。
「源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書」を作成し、管轄の税務署に提出することで手続きが完了、申請書に問題がなければ提出した月の翌月末日に承認があったものとされ、申請の翌々月の納付分からこの特例が適用されます。
役員賞与にかかる社会保険料
役員賞与に対する健康保険料の上限は年度の報酬の累計額で573万円、厚生年金保険には150万円の上限が設けられています。
役員賞与における社会保険料の上限
健康保険料:573万円(年度累計)
厚生年金保険料:150万円(1回の支給につき)
役員退職金
従業員の退職に対して会社が支給する対価が「退職金」で、役員の退職に対して会社が支給する対価が「役員退職慰労金」です。
退職金は、就業規則の退職金規程にもとづき支給されます。
役員退職慰労金は、取締役・監査役など役員だった人が退職する際に支払う慰労金のことですが、役員退職慰労金には、退職金規定のような規定を作成する必要はありません。
退職金規程を作成すると、従業員に退職金を払う義務が発生しますが、役員には払う義務が発生しません。なぜなら、会社と従業員は雇用契約の関係ですが、会社と役員は委任契約の関係だからです。ですので、退職金規程をつくって役員退職金を払ってもいいのですが、経費にはなりません。会社が勝手に払ったものとみなされるのです。
役員退職金を経費にするためには株式会社では議事録、合同会社では同意書を作成します。
退職金が支払われるのは退職した時ですが、実際の退職時のみならず、役員になった時や役員ではなくなった時も退職扱いとして退職金が支払われます。
株式会社の場合
従業員から役員になる
役員から従業員になる
退職
合同会社の場合
社員から代表社員又は業務執行社員になる
代表社員又は業務執行社員から社員になる
退職
役員の退職金の算出方法
役員退職金 = ①退職時の役員報酬月額 ✕ ②役員在任年数 ✕ ③功績倍率(+④功労加算)
②役員在任年数
7年5か月や1年未満の端数は切り上げます。
③功績倍率
会長・社長は3倍、専務・常務は2.5倍、取締役は2倍が多いようですが、税務上は同業他社の水準と比較されるようです。
④功労加算
功労加算を含めて3倍までが多いそうです。
課税退職所得
退職金は会社側が源泉徴収するので、原則として確定申告は必要ありません。しかし、例えば「退職所得の受給に関する申告書」を会社に提出しなかった場合、一律で20.42%の所得税が源泉徴収されます。本来の税率がそれ以下の場合は、確定申告すれば差額が還付されます。
退職金にかかる税金の計算方法は、退職所得と退職所得控除額から課税退職所得を計算して、それをもとに所得税と住民税を計算します。
退職金(退職所得)から課税退職所得を求める方法は、まず退職金(退職所得)から退職所得控除額を引いて、さらにその額を2分の1にします。退職所得控除額が退職金(退職所得)よりも大きければ、納める税金はありません。
課税退職所得={退職金(退職所得)-退職所得控除額}÷2
退職所得控除額
退職所得控除額の計算方法は、勤続20年以下なら勤続年数×40万円です。勤続21年以上なら、20年×40万円=800万円に加えて、20年を超える分に対して勤続年数×70万円を加算します。
勤続20年以下 : 勤続年数×40万円
勤続21年以上 : 20年×40万円=800万円に加えて、20年を超える分に対して勤続年数×70万円
所得税
退職金(退職所得)の所得税の計算方法は、給料やボーナスなどの計算方法と同じです。課税退職所得に所得額に応じた税率をかけて、控除額を引いた額が所得税額となります。それに加え、所得税額に2.1%を掛けた復興特別所得税を足したものが合計金額となります。
住民税
退職金(退職所得)の住民税は、課税退職所得に10%を掛けて計算します。
参考情報
社会保険料
源泉徴収税
実際の私の手続き
私は9月末で会社を退職し、翌年5月分までの住民税は会社が一括で徴収しました。私は自分の法人を翌年1月に設立し、役員報酬を1月から受け取りを開始しましたが、5月までの住民税は支払済の為、1月から5月までの役員報酬から住民税は徴収されていません。6月以降の役員報酬から前年の所得に対する住民税の徴収が始まりました。
【役員報酬(定期同額給与)月額万円】
健康保険料:円
厚生年金保険料:円
源泉徴収税(所得税):円
特別徴収税(住民税):市区町村より通知のある金額
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